北朝鮮の首都はピョンヤンである。漢字で書くと平壌。これは知ってる人が多いであろう。では、韓国の首都ソウルの漢字表記は? という質問に答えられる人は少ないと思う。
それもそのはず、ソウルの漢字表記はないのである。
1394年、李氏王朝がソウルを首都と定めて漢城と名付けたとき、読み方は朝鮮式の「Hansung(ハンスン)」だった。1910年、朝鮮半島が日本植民地になったとき、日本はこれを「京城」と改名し、読み方は日本式の「けいじょう」となった。1945年、朝鮮半島は解放され、大韓民国はまたソウルを首都とした。それは「首府」という言葉で称したが、漢字を使わず、韓文だけを用いて書くことになった。こうしてSeoulは朝鮮半島で唯一漢字表記のない都市となったのである。
かつて、世界の華人は韓国の首都を漢城と称していた。一つには長い歴史の中で一般化した慣習であり、二つには韓国政府の印刷発行した中国語史料でも正式名称を「漢城」としていたからである。
このようないきさつで、中国語におけるソウル表記は「汉城」(日本の漢字表記では漢城)となっていた。しかし、今年の一月、韓国は首都Seoulの中国語訳名を漢城と呼ばず、「首尔」(日本語表記では首爾)に改名すると発表した。これは韓国政府から中国語首都名称の表現方法を統一するもので、歴史上前例のない試みである。
果てして、「首尔」という呼称は浸透するのだろうか。留学時代、ソウルは「汉城」と呼ぶと覚えた者にとっては「汉城」のままのほうがうれしいが・・・。