引っ越した。中国に来て4度目の引越しである。決して好んで引っ越しているわけではない。毎回、何らかの事情があって引越しせざるをえなくなるのである。はじめての引越しのときは、車に荷物を全部乗せて一回で終わったが、今回はそう簡単にはいかない。荷物が自然繁殖しているかのように増えている。結局、タクシーで4往復することになった。
引越しの最中、時々脳裏に葛飾北斎が現れた。あの浮世絵で有名な北斎である。彼は生涯で確認されているだけでも96回も引越しを繰り返したという。引越しする理由がすごい。部屋が散らかったからである。どうやら彼は全く掃除をしなかったようだ。部屋が散らかったら引っ越すという奇行を繰り返した。当時の引越しは簡単にできたのだろうか。
中国の引越しはそう簡単ではない。特に、外国人は居住手続きなど面倒なことが山ほどある。できれば引越しはしたくない。
引越しが完了するとほっとする。新しい家にきて飲む最初のコーヒーは格別にうまい。そして、片付いた部屋を見渡しつつ、かつての散らかった部屋を思うとき、北斎の気持ちが少しわかるような気がするのである。