大阿蘇 三好達治
雨の中に馬がたつてゐる
一頭二頭仔馬をまじへた馬の群れが 雨の中にたつてゐる
雨は蕭々と降つてゐる
馬は草をたべてゐる
尻尾も背中も鬣(たてがみ)も ぐつしよりと濡れそぼつて
彼らは草をたべてゐる草をたべてゐる
あるものはまた草もたべずに きよとんとしてうなじを垂れてたつてゐる
雨は降つてゐる
瀟々と降つてゐる 山は煙をあげてゐる
中嶽の頂きから うすら黄ろい 重つ苦しい噴煙が濠々とあがつてゐる
空いちめんの雨雲と
やがてそれはけぢめもなしにつづいてゐる
馬は草をたべてゐる
艸千里浜のとある丘の
雨に洗はれた青草を 彼らはいつしんにたべてゐる
たべてゐる
彼らはそこにみんな静かにたつてゐる
ぐつしよりと雨に濡れて いつまでもひとつところに
彼らは静かに集つてゐる
もしも百年が この一瞬の間にたつたとしても 何の不思議もないだらう
雨が降つてゐる 雨が降つてゐる
雨は瀟々と降つてゐる
大正15年4月、解くすべもない惑いを背負うて、行乞流転の旅に出た。
分け入つても
分け入つても
青い山
種田山頭火
关山月 李白
明月出天山, 苍茫云海间.
长风几万里, 吹度玉门关.
汉下白登道, 胡窥青海湾.
由来征战地, 不见有人还.
戍客望边色, 思归多苦颜.
高楼当此夜, 叹息未应闲.
関山の月 李白
明るき月ぞ天山に出づ
蒼茫たる雲海を照らしたり
万里のかなたより風は吹き来たり
いま玉門関を吹き過ぐる
漢兵は白登の道を下りて戦に向かひ
胡の兵は青海湾進出の機を窺ひぬ
古来よりここは戦場の地なり
人の生きて帰るを知らず
ここを訪れし者たちよ はるかかなたを見やりて
いかなる望郷の思ひにや沈みけむ
今宵高楼にありて
嘆きとどめむすべを知らなく
※上記の詩は西安での作です。正直いうと、漢詩の素養はまったくありません。独断で翻訳したので、間違っているところもあるかと思います。